山形盆地の神社と鳥居の損傷痕から推定した1964年新潟地震の被害

2010年06月08日公開,2011年04月01日更新

山形大学地域教育文化学部生活総合学科生活環境科学コース

川 辺 孝 幸
平成23年(2011年)東北太平洋地震のページはこちらです.
山形盆地の神社と鳥居のデータベースはこちらです.



46年前の新潟地震の際に、山形盆地でも、震度5強に相当する強い揺
れの地域があることなど、新たな地震動の様子が明らかになりました。


 今から46年前の昭和39年(1964年)6月16日に発生した新潟地震(1964年新潟県下越沖地震)では,新潟市や山形県庄内地方での被害が注目されましたが、震度4とされた山形盆地内でも被害が発生しています。

 当時、山形盆地内では、山形地方気象台(山形市緑町)の震度記録があるのみで、震度4が計測されていますが、強い揺れの方向も地震計が振り切れて不明でした。また、盆地内の個々の揺れの様子はわかりませんでした。
 今回、山形盆地内に分布する約520の神社を調査し、現存する約290基の石造鳥居について被害状況を調査した結果、山形盆地でも、震度5強に相当する強い揺れの地域があることや、軟弱な地下地質によって、伝わってきた揺れとは異なる方向の大きな揺れになる地域があることなど、詳細な地震動の様子を明らかにすることができました。

 わかったおもなことは,
1).石造鳥居の被害状況から推定される震度は,盆地内では,おおむね震度4であるが,震度5強に達する地域もある.
2).盆地の地下の岩盤に伝わってきた地震の強い揺れは,おおむね南北方向の揺れであった.
3).扇状地上では震度4程度であるが,昔の川の跡など場所によっては被害が大きいところがある.
4).軟弱な地層が厚く発達している盆地中央部では震度5強程度と揺れが大きく,揺れの方向も東西方向に変わる.
5).砂礫から砂泥に移り変わる扇状地の末端付近でも,震度5弱程度と,やや揺れが大きくなる.
などです.

 さらに,1964年新潟地震以降も,山形盆地東縁部では,1978年宮城県沖地震や2003年宮城県沖地震,2008年岩手沿岸北部地震などによっても被害を受けているものがあり,震度5弱程度の揺れの範囲があることがわかりました.

石造鳥居の損傷痕から推定した震度分布
石造鳥居の損傷痕から推定した震度分布と揺れの方向


● 山形盆地内の揺れやすさと盆地の地下のようすとの関係

 山形盆地の中でも,山形市中野や中山町などでは,震度が大きくなっているとともに,揺れの方向がほかの地域が北北西-南南東方向の傾向であるのに対して,東西方向に近いゆれになっています.このような違いは,断面で示すように,盆地の地下の様子の違いから,中山町周辺では,柔らかい泥の層が厚いため,地震動が山形盆地に届いた際,あたかも器をたたいたとき,中のプリンがプルンプルンと揺れるように,泥の層が揺れるのだと考えられます.また,揺れの方向が東西方向になるのは,器のかたち(南北方向に細長く東西方向に狭い)によるものと考えられます.




● 揺れやすい中山町周辺のようす(立谷川上空からの眺め)
山形盆地中央部は,人間が住む前も,こんな感じで,沼や湿地が広がったいたと思われます.







●鳥居の被害と地震による揺れの震度との関係
 2007年能登半島地震の際に調べた能登半島における鳥居の被害度と震度と関係から,山形盆地における石造鳥居の被害度と震度の関係は,下の図のようになると考えられます.




●鳥居のキズを調べてみよう

 過去の地震による鳥居の被害を調べることで、今後、大きな地震が発生したとき、より狭い範囲での地盤の揺れやすさや、揺れの特徴を予測することが可能となり、地域ごとのきめ細かい防災対策に生かすことができます。
 また、このようなデータをもとに、46年前の新潟地震を経験した方の話を、地域や家庭で伺うことで、防災意識の向上に繋がれば幸いです。

   

■ 新聞記事


■ 論文等

■ 更新履歴