山形大学地域教育文化学部生活総合学科生活環境科学コース地学(川辺)研究室
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に関して

山形県東村山郡中山町長崎の被害

山形大学地域教育文化学部生活総合学科生活環境科学コース 川辺孝幸
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2011年04月01日公開


調査日:2011年04月01日

 奥羽山地を挟んで内陸側の山形県内では,尾花沢市若葉町,東村山郡中山町長崎,上山市河崎,米沢市林泉寺など,尾花沢盆地や山形盆地,上山盆地などの内陸盆地でも,震度5強の強震動が計測されています.これらの内陸盆地には,山形盆地で典型的なように,盆地内には泥質堆積物が発達していて,人間が住む前も,上の写真ような感じで,沼や湿地が広がったいたと思われます.地震によって,盆地内の泥質堆積物が揺れることで強震動が起こったと考えられます(『山形盆地の神社と鳥居の損傷痕から推定した1964年新潟地震の被害』のページを参照).

 そして,今回の地震では,実際に家屋の被害等が発生しました.

 本報告では,本日,別の要件で中山町に行く機会を得たので,ついでに概査的に調査をおこなった結果を示します.今後改めて調査を行う予定です.


■ 中山町長崎の被害について

 中山町長崎では,町役場を中心とする範囲に,倒壊を含む建物,国道112号の路盤変状,お寺や個人のお宅の灯籠や墓石の転倒などの被害が発生しています.

 下の図は,被害の分布と,その被害をもたらした力の方向を示したものです.地面の地震動の方向は,この方向と逆方向になります.




【建物被害−土蔵≫住家】

 中山町長崎は,江戸時代に紅花交易で栄えた町で,土蔵を備えた立派な母屋の旧家と,最近建て替えられた高気密高断熱の家屋との混在する街です.
 本日調査した範囲では,建物被害は,すでに撤去されていた1棟の倒壊を含んで,計10棟の被害が確認されました.
 被害のほとんどは,土蔵造りの建物で,柱がわずかに傾き,壁が落下しています.同じような年代の住家でも,ほとんど被害発生していません.住家の屋根が,積雪地域のため,銅板もしくは鉄板葺きで,瓦葺き屋根に比べるとはるかに軽量につくられているからかもしれません.

 壁の剥離の方向性や建物の傾き具合から判断される変形方向からすると,北東-南西方向〜東北東-西南西の揺れ,特に北西〜西北西方向に力が働いたと推測されます.

    


【灯籠,墓石などの転倒】

 本日調査した町役場周辺の北東部にある天性寺の墓地では,新しい耐震施工の墓石が多く,倒壊や回転を示す墓石はほとんど見られませんでしたが,灯籠や,巨礫を使った古い墓石などの転倒がいくか見られました.また,役場近くの民家の庭先の灯籠も転倒しているのが確認されました.
これらの転倒方向は,北東-南西のものが多くありましたが,南東方向に転倒しているものも見られます.




【調査地域の気象庁震度階級=震度5強】

 以上のように,中山町長崎地域では,住家の被害はほとんど見られなかったものの,土蔵や灯籠などに被害が見られ,気象庁震度階級も,計測震度と同じ『震度5強』であったとみることができます.


【強震動の方向】

 上述のように,土蔵や住家の被害からは,働いた力は北西-南東〜西北西-東南東方向を示すものが多く,灯籠などでは北東-南西方向を示すものが多くあります.このことから,土蔵や住家と灯籠などでは,働いた力の方向は異なるように見えます.
 このような違いは偶然なのか,それとも固有周期の違いなのか,地盤や住家で被害が少ないことと合せて,さらに詳細に検討する必要があります.

[更新履歴]

    2011/04/01 23:20 公開

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