山形大学地域教育文化学部生活総合学科生活環境科学コース地学(川辺)研究室
2007年新潟県中越沖地震地質災害調査報告

新潟県柏崎市荒浜の鳥居と墓石の被害について

山形大学地域教育文化学部生活総合学科 川辺孝幸
山形大学地域教育文化学部地域教育学科3年 奥山明洋・黒木 渉
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調査日

2007年7月24日.

調査位置

 新潟県柏崎市の北縁,日本海に面した荒浜集落(第1図).
 西側の海岸沿いに細長く延びた東京電力柏崎原子力発電所のある丘陵が海岸に望む場所にあり,丘陵を開析した谷の出口で,表層には現世砂丘堆積物または後浜堆積物が堆積していると思われる.

調査位置図

第1図 調査位置図 国土地理院発行1/25000地形図『柏崎』を使用した.


諏訪神社の鳥居の被害について

 諏訪神社の鳥居は,県道215号線に面した西北西方向の柱の並びをもつ鳥居である(第2図).

第2図 柏崎市荒浜の諏訪神社の鳥居の破損 鳥居は笠木と貫が落下し,東北東側の柱が貫の部分から破断した.落ちた柱より外側の貫もしくは笠木が,隣接する石碑の頂部に当たって,石碑は途中から折れた.

第3図 半壊した諏訪神社(柏崎市荒浜)

第4図 半壊した法華寺(柏崎市荒浜)

 この周辺では,倒壊家屋は多くは無いが,神社および隣接する法華寺の建物は,いずれも東北東に傾いている(第3図,第4図).
 諏訪神社の鳥居は,貫および笠木が落下し,東側の柱が貫部分で破断した.鳥居から落ちた笠木または貫の東側に張り出した部分が,隣接してある石碑を直撃し,石碑も途中から折れた(第2図,第5図).

 第6図は,貫部分で破断して落下した東側の柱の上部である.貫の南側が一番広い面積で剥離している.一方,破断面をよく見ると,貫の穴に近い南側が汚れていて,もともとヒビが入っていたことがわかる.折れた下側が第8図である.貫の下側の大きい剥離面は新鮮な面で,今回の地震で剥離したものであるが,上部と同様に,貫の穴の南側では汚れた破断面が見られる.
 第7図は西側の柱の上部で,貫の穴の下と最上部の鳥居の内側(東側)に剥離した痕が認められる.しかし,これらの剥離面は柱の無傷の部分と同様に汚れていて,今回の地震時にはすでに剥離していたことがわかる.
 第9図は東側の柱の基部である.柱やその周辺の土台には損傷は認められない.しかし,土台の西側の綾には,汚れた損傷痕が認められる.
 第10図は西側の柱の基部である.一見損傷痕は無いように見えるが,よく見ると,北側1/3程度に斜め45度方向にひびが入っている.ひびの縁は新鮮なように見えるが,ひびの隙間の中は汚れているように見える.

 以上のことから,今回の地震によって,少なくとも貫部分の損傷状態からは(川辺,2007a, 2007b),鳥居の柱の並びと平行よりやや東側ずれた方向に,上部が東に移動する変形で壊れたことがわかる.その際,以前の地震(おそらくは2004年中越地震)でできたひびがあることで材料強度が大幅に低下していたため,そこで破断したと考えられる.このような変形と破壊をもたらした外力は東北東もしくは東西方向にちかい方向からの外力によるものと思われる.

 なお,前回の(おそらくは2004年新潟県中越地震による)被害は,倒壊には至らなかったものの,十分に高い被害の程度であった.当時,貫は落下したとみられるが,実際に現地の聞き込みで確認する必要がある.川辺(2007a,2007b)による点数の合計では,柱の大幅なひび割れは点数が無いので,笠木の落下と柱の破断の間をとって5点として計算すると,その5点+貫の落下で,8点に達する.内藤ほか(2005)では,高浜は南側からの北北西方向の異常震動帯の延長に位置するが,具体的なデータは示されていない.しかし,前回の被害状況からは,十分に強い強振動を受けたことがわかり,異常震動帯が海岸部まで伸びていることをうかがわせる.

第5図 石碑の頂部の南側の綾には,落下した貫もしくは笠木が当たって損傷痕ができている.

第6図 折れて落下した東側の柱の貫より上部.南側の破断面は汚れていて,今回までにひびが入っていた.

第7図 西側の柱の上部.貫の下および柱の頂部には剥離痕が認められるが,いずれも汚れていて,今回以前の傷であることがわかる.

第8図 折れて落下した東側の柱の貫より下の部分.貫の下には新鮮な剥離痕があるが,南側の破断面は汚れていて,今回までにひびが入っていたことがわかる..

第9図 東側の柱の基部とその周囲の土台には損傷痕は認められないが,南側に古い損傷痕がある.土台の北西角の傷は新鮮で,今回できたものである.

第10図 西側の柱の基部.北側1/3に,斜めにひびが入っている.ひびの縁は新鮮であるが,ひびの隙間の中は汚れていて,以前にできた傷である.

法華寺墓地の墓石の損傷状態

 鳥居の東側に隣接する法華寺の墓地では,数は多くないが棹柱が転倒した墓石が見られた.墓地の道路沿いのものは倒壊率が高く,北側の谷の部分では低い.両者の間に,砂丘本体と谷部を埋める泥質な?堆積物との地質的な差が効いている可能性がある.
 道路沿いのものは,ほとんどのものが遠位を棹柱の底部に向けて,ほぼ東南東方向もしくは西北西方向に転倒している.回転しているものはあることはあるが,あまり見られない.

第11図 柏崎市荒浜の蓮華寺墓地の墓石損傷状態 谷の部分では損傷は少ない(下左,下右の奥)のに対して,道路沿いの高い部分では被害が大きい.東南東もしくは西北西方向に転倒しているものが多い.

文 献

川辺孝幸(2007a)地震による石造鳥居の被害から地震動を推定する−2007年能登半島地震と2007年中越沖地震の場合−.http://kei.kj.yamagata-u.ac.jp/kawabe/www/torii/
川辺孝幸(2007b)2007年能登半島地震における石造鳥居の被害調査から推定される地震動−方法論−.地球科学,61, 5, 印刷中.
内藤信明・丹尾貴志・高濱信行・新潟大学調査団墓石被害調査チーム(2005)中越地震の異常震動帯―墓石被害調査―.新潟県連続災害の検証と復興への視点-2004.7.13水害と中越地震の総合的検証-, 64-71.

(2007年7月28日記)


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